2020.10.08 Thu

使い心地の理由。クチポールと「人間工学」

モダンなデザインが人気のクチポールのカトラリー。
しかし私がクチポールに惹かれたのは、外観以上に使い心地でした。
体の延長であるかのような手へのなじみの良さ、軽やかな取り回し。

今回は人間工学の観点を参考にしつつ、
4本のカトラリーを比較することで
クチポールの使いやすさを解明していきます。


(上からクチポール MOONブラック、GOAブラックシルバー、他社製ディナーフォーク2種)

◆人間工学(にんげんこうがく)とは◆

人間が可能な限り自然な動きや状態で使えるように
物や環境を設計し、実際のデザインに活かす学問
 (Wikipediaより)

これを具体的に感じられるポイントが、「重心」です。
まずはこちらの画像をご覧ください。

MOONブラック

GOAブラックシルバー

他社製フォークA

他社製フォークB

カトラリーを指に置き、左右のバランスが取れる箇所を示しました。
重心の位置はこんなに違うのです!
重心が最も左寄りなのがGOA、真ん中に近い左寄りがMOON、
他社の2点は柄の右側に寄っています。

みなさんは、フォークをどの位置でお持ちになりますか?
個人差がありますが、私は画像のように、GOAのステンレスと樹脂の境目あたりを持つことが多いです。
重心とは、「そこで支えると左右のバランスが取れるポイント」。
持つところと重心が近い(あるいは重なる)とき、
カトラリーは左右に偏らず、バランスよくしっくりと手に収まる
といえるでしょう。
それでは、各カトラリーの重心と持ち位置はどうなっているでしょうか?

他社製フォークBを重心位置で持ちました。
重心が高く、不慣れもあって少し扱いづらいです。
しかし、「それでは」と慣れた位置(上のGOAの画像のあたり)で持つと
フォークは右側(柄の方)に倒れます。
指はそれを支えるため常に力を入れ、無意識に緊張した状態になります。

各カトラリーの重量は
MOON 55g
GOA 29g
他社製品A 76g
他社製品B 69g
となりますが、数字で表れる以上の重さを他社製品には感じます。

MOON、GOAはどうでしょうか?
MOONは、同じオールステンレスのカトラリーでも
重心への配慮がなされています。
重心が低め(左寄り)に移ったぶん手への収まりが向上し、
他社製フォークとそう変わらない重さなのに、かなり軽く感じます。
カトラリーに大事なのは重さよりバランス と実感できます。

柄の軸径や指に触れる部分の丸みも、考え抜かれたデザイン。
一体感のある持ち心地をさらに高めます。
手にしっくりと馴染むから、すくう、刺すといった複雑な動きも安定する。
スマートなカトラリーは扱う人の所作も美しく見せます。

◆それをさらに突き詰めたのがGOAです。◆

GOAとMOONは、形がほぼ同じで、材質が違います。
刃の部分はともにステンレス。
MOONは柄に至るまでオールステンレスであるのに対し、
GOAは柄の部分(黒いところ)が樹脂でできています。

これの何がいいのか?

GOAの重心はMOONよりさらに左にあります。
樹脂がステンレスより軽量な素材なので、同じ形でも柄が軽い。
結果、GOAの持ち位置と重心は「近い」どころか
ほとんど「一致」しています。

29g と4つの中で最軽量な上に、バランスも最上。
これがGOAの大きな特徴です。

人間工学の定義をもう一度見てみましょう。
人間が可能な限り自然な動きや状態で使えるように
物や環境を設計し、実際のデザインに活かす学問

◆GOAのステンレス×樹脂の柄 という組み合わせが生んだ、
重心と持ち位置が重なる絶妙な重量バランス。◆

これが人の手から余計な力みを取り去り、
自然で軽やかな状態・動きを実現するなら
GOAのデザインはまさに、人間工学の目標と合っています。

ステンレス×樹脂というクチポールのデザインは外見だけでなく、
重心の最適化という人間工学の観点からしても、
画期的なアイディアだったと言えるでしょう。

スッと手になじみ、自然に、自在に取り回せる。
ぜひ実物をお手にとって、
クチポールのカトラリーの目には見えない魅力を
ご体験いただければと思います。